EX2.3-あの日の切望-3

 

「ぁあ……」

 

P.P.Lから外出許可を得て、ほんの少しだけ街に出た。

 

「もう、そんな時期なんだね」

 

街中に、年末と新年を祝う飾りが施され、住人たちも楽しそうに往来している。友人同士であろう集団。カップルであろう二人組。親子。家族……。

 

「……」

 

幸せに溢れた人の波は、ヴィエンタにとっては悲しみを煽り立てる不快な波。メイたちとああやって過ごせていたら。シルファナたちとああやって過ごせていたら。願ったって頑張ったって叶わなかった。どうして、どうして。

 

「……どうして」

 

様々な負の感情が、心の奥底から溢れ出す。かと思うと、薄気味悪く笑みを浮かべて。

 

「……違う。そうじゃないよね。私がまた、叶えるんだ。皆と、もう一度……」

 

ふふ、ふふふ、と暗く掠れた声を漏らしながら、ふらりと人々の波から逃げていった。

 

たった一人で、変わらぬ願いを、今年も抱きながら。