インターホンを鳴らした人物。それは。
「ごめんください!わたしです、フィリアです!」
聞き覚えのある声と名前を聞いて、3人は安堵した。
メイとの一件の後、フィリアはえくれあたちによって無事に心を持ち直して戻ってきていた。メイの見舞いにも来てくれていて、アテフたちはそこで初めてフィリアと顔を合わせたのだ。しかし、フィリアがやってきたときはメイは眠っていて、フィリアが戻ってきたことを知らない。知らないまま、あんなことになってしまった。
「そなたか……。今開ける」
アテフは扉のロックを解除する。ナナリカとめぐも一安心して扉の前へ。目の前にはフィリアと……
「?そちらの御仁は……」
隣に、見覚えのない人物が立っていた。
薄い紅色の長髪を束ねた、デューマンの女性。彼女はにこりとしながらオッドアイの瞳でアテフたちを捉え、明るく自己紹介をした。
「私はソフィアです!武器商人、そしてアークスでもあるの。よろしくね!」
気の良さそうな彼女ーーソフィアの笑顔に釣られて、ナナリカとめぐも、
「ソフィア殿かっ、ワタシはナナリカだ!よろしくなっ!」
「ボクはめぐ。よろしくね」
とにこやかに挨拶をした。
その傍で、アテフだけは首を傾げていた。
「……武器商人、ソフィア……どこかで聞いた名だと思ったが、もしやサギリという武器職人と交流があったりしないか?」
「ああ!知ってる知ってる!たまーに武器を売り捌いて欲しい〜ってお願いが来たりするんですよ!ちょっと変な人だと思うけど、腕は確かだからサギリさんの武器すっごく評判いいのよね!」
「ふむ、やはり……」
アテフはソフィアのことをサギリから聞いて知っていたのだ。人の縁とは本当にどこでどう繋がっているか分からないな、と感じながら、ソフィアとの話題に一度区切りをつけた。
「して、フィリアにソフィア殿。何か用があって来たのだろう?」
「あ、そうです!!あの、メイさんのこと、で……」
フィリアが少し口ごもり気味に答える。アテフたちははっとして顔を見合わせた。
「君達も、聞いたのだな」
「はい、実は今朝……」
フィリアが言うには。
早朝から、フィリアがソフィアにツインダガーの指南をしていて、メディカルセンターが開く頃合いを見て切り上げ、2人でメイのお見舞いに行ったという。
「わたし、メイさんに教わったツインダガーを今度は教える立場になったことを伝えようと思ったんです。元気付けられたらいいなと思って。あと、今度こそちゃんと謝るために……。メイさん、いつも眠っていたので」
そしてメディカルセンターを訪れたはいいものの、メイの病室に通してもらおうとしたらーー
「夜に起きたことを聞かされた、って訳なの。それで、あなた達も絶対にメイちゃんを助けるために動くだろうって踏んで、私達も協力したいなーって思ったのよ!」
「お願いします、わたし達にも協力させてください……!」
フィリアとソフィアが代わる代わるこれまでの経緯を説明した。納得したアテフは、ナナリカとめぐに目配せをしてみる。2人とも肯定の意を示して頷いてくれた。
「……分かった。こちらとしても、心強い」
アテフはフィリアとソフィアの協力を快く受け入れた。
「!ありがとうございます!!」
「よしきたっ!それじゃ早速、何から手伝おうかしら!」
表情を明るくして張り切る2人。アテフは先程一家で話し合っていた今後の行動について説明し、フィリアとソフィアにも探索任務に同行してもらうことになった。
「それでは、今の内にパーティ編成を決めておこう。まずは……」
アテフの言葉に反応し、訴えかけるような目で見上げてくるめぐと視線が合う。アテフはやれやれと溜息をつきながらも、めぐの意思を汲み取った。
「……俺とめぐの2人、ナナリカとフィリア、ソフィア殿の3人で頼む。……何だ?」
その様子をしっかり目撃していたフィリアとソフィアが微笑ましげに表情を緩めていたが、ハッとして改まる。
「あっ、はい!!わかりましたっ!」
「了解でっす!いやー、仲良しなんだな〜ってつい!」
ソフィアのみ、すぐに表情を緩めて冷やかしにかかった。困惑するアテフを他所に、めぐは「当然」と胸を張っていた。
「だってボクはあっくんの」
「キサマまた性懲りも無くッ!!!しかもこんなときに!!やめんか!!!」
めぐの言葉をナナリカが遮る。最早お馴染みの流れ。あたふたするフィリアとは対照的に、ソフィアはもう耐えられないといった様子で声に出して笑っていた。
「あはは!こんなときだからこそ、たまには明るくったっていいんじゃないかしら!気落ちしたまんまじゃ参っちゃうし!」
「それはそうですけど……!このままだとあの2人、喧嘩になっちゃいますよ!」
「いや……いつものことだ、気にしなくて構わないよ」
大騒ぎするナナリカとめぐを横目に、またひとつ溜息をつくアテフ。しかしながら、元気のなかったナナリカがいつもの調子に戻ってくれたことに安堵もしていた。めぐはこれを見越していたのか、それとも天然なのかは分からない。
「ほれ、そろそろ行くぞ。続きは探索任務が終わってからにしなさい」
「むうー……。はあーい!!」
「ナナリーが突っかかってきただけなのにー。まあいいや、分かったよ!あっくん!」
明るさを取り戻した一家と新たな2人の協力者。
共に、メイの救出のためいよいよ動き出した。