暗闇への恐怖と孤独感の理由

 

・ニーウは彗星片が存在する限り不死であり、またこの彗星片はオラクルに存在する如何なる方法を取っても破壊はできない。つまり、永遠に、宇宙の終わりまで、否が応でも生き永らえることになる。

 

・ニーウの現在の肉体はアイラクのフォトンを基礎に形成しているため、アイラクが死ぬとニーウも身体を保てなくなり、周囲のフォトンを自分だけの力で肉体を得る程の量を集めることは到底できず、彗星片から出られなくなる。

 

・ニーウを宿す彗星片はイグによってどこかの惑星の奥地へ連れて行かれるが、イグまでもが死んでしまうとそこからは何者にも気付かれることなく、その惑星が滅びるまでその場にとどまり続ける。

 

・惑星が滅びた後、彗星片は宇宙へ放り出され、長い永い時間漂うことになる。時折どこかの星の重力に引かれて落ちることはあるが、たいてい知的生命体は存在しない荒廃した星で、また星が滅びるのをただ待ち続け、宇宙に放り出され……この繰り返しを、やはり長い永い間行うことになる。

 

・最初のうちはアイラクたちとの思い出を振り返りながら日々を過ごしていたが、それも繰り返しすぎて喪失感と孤独感が襲う。そして彗星片の中で、見渡す限りの暗い暗い宇宙を眺めながら、いっそう喪失感と孤独感を膨れ上がらせていく。時折見える光る星も、ニーウにとっての希望とはなり得なかった。

 

・結局、宇宙の終焉までの気が狂う程の時間を、気が狂う程の闇の中で、気が狂う程の孤独感に飲み込まれ、過ごすこととなる。終焉の頃にはとうにニーウの精神は完全に崩壊しており、「狂気」そのものだった。


・そして終焉の間際、亜空間に辿り着く。彗星片は亜空間に飛び込んでいき、気付けば異世界へと飛ばされていた。その異世界はーーオラクル。

 

・このオラクルはアイラクたちがまだ生きている世界線のオラクルであり、ニーウを宿す彗星片はおのずとアイラクのもとへ引き寄せられていく。しかし、精神崩壊と亜空間渡航の反動により以前のオラクルの記憶は全て失っており、残っているのは「狂気」のみだった。

 

・こうして、「狂気」のニーウを宿した彗星片は以前のオラクルでそうなったのと同じように、アイラクの頭に埋没し、以前のオラクルと同じようにフォトンについて学習し……同じように(再び)、外の世界へ飛び出していく。


・そしてまた、アイラクが天寿を全うし、他の仲間たちも同じようにこの世を去っていき、誰もいなくなり、誰にも気付いてもらえず……