狂気の顕現

ある日の朝。

「ふあ……」

アイラクはいつもの通り目を覚まし、のそのそと起き上がったーーのだが。

「や、おはよう」

起き上がると、目の前に見覚えのない顔。いや、しかし、どこかでーー。

「……ああああああっ!!?」

アイラクはすぐに跳ね起き、馬乗りになっていたそれを勢いよく跳ね飛ばした。

「あはっ、びっくりしてる!その顔が見たかったんだよぉ」

それはアイラクを指差してけらけらと笑った。ここに居るはずのない存在。そもそも実在すら怪しかった存在。この者は間違いなくーーアイラクの中に宿ったかの狂気の人格であった。

「どう、して……?どうやって、そとにでたの?」
「お前の中で、フォトンってものについて色々学んだのさ。傷の治癒、ダーカー因子とやらの浄化、テクニック……それどころかこの世界は大体フォトンで構成されてるって言ってもおかしくないって感じだよねえ。これ、便利だよね。おかげでこうして身体を生成できたんだから」
「フォトンで、そんなことが……」
「何を今更。お前たちアークスの敵であるダーカーやダークファルスも、質は違えどフォトンの塊みたいなものでしょ?僕はそいつらや他にも色々見て、肉体の構築を学んだだけだよ」

楽しそうに、鼻歌でも歌うかのように語るそれ。アイラクは、これが肉体を得てしまったことに言い知れぬ危機感を覚えた。

「それで、すきかってに、あばれるつもり、なの?」
「さあ、どうだか?でも少なくとも、自分の足で、好きなようにこの世界を見て回れるようになった。だから思う存分惑星をめぐるつもりだよ。ふふっ、楽しみ。楽しみだなあ!」

そう言うと、高笑いしながら部屋を出て行ってしまった。

「ま、まって!だめ!」

あれを野放しにしては何をするか分からない。そう思い、アイラクはあれを追いかけた。