孤独、そして

かの彗星片の一件から数週間。アイラクの身の回りでは様々な変化が起こった。
それも、悪い変化ばかり。

「……」

無表情でロビーの隅で俯き、突っ立っている。アークスたちはアイラクの姿を見ると、慌てて避けていく。

『けけっ。そんなに暗くしてたらみーんな逃げてっちゃうよ?今までの威勢はどうしたのさぁ』
「うるさいの……」
『ふふ、怒ってる?怒ってるねぇ〜』
「だまってよっ!!!」

アイラクが叫んだ瞬間、静電気レベルだが身体からフォトンの電流がばちっと音を立てて放出された。突然叫んだことで周囲の人々の視線が集まるが、叫び声のおかげで放電の音はばれていないようだ。

シップ内ではリミッターがかかっているにも関わらず、フォトンが放出されてしまう。しかも、自分の意思とは関係なく。それ程までに、アイラクの中のフォトンが膨れ上がっていたのだ。
アークスたちが彼女を避けるのは、なにも暗いからではない。彗星片の影響で異常隆起したフォトンが、戦闘中に度々暴発し、味方を巻き込んでしまうからだった。このせいでかつて共に戦っていた仲間たちも離れてしまったのだ。

「あっ……」
『くすくす……』
「っ……!!」

そう、感情の起伏で、簡単に暴発してしまう。これは喜怒哀楽どの感情でも起こり得る。以前は任務中に危ないところを助けてもらったアークスに対する喜びの感情から放電してしまったことがある。
なので、暴発させないために極力無表情、無感情でいることが多くなった。朗らかな笑顔も、今は見る影もない。笑うと人を傷つけてしまいそうで。

「……いいから、もう、はなしかけないでほしいの」
『けけ、冷たいなぁ』

アイラクを煽ってくるこの声は、あの日夢で出会った真っ白な少年。曰く、あの彗星片に乗って異世界から飛んできた存在らしい。未知のエネルギーの正体は、この少年の思念体ということになる。

『僕だって、この世界に飛んできたのは事故みたいなものだし、お前の頭に刺さったのも事故。仕方のないことなんだよ。話し相手くらいにはなってくれてもいいじゃない?』
「なら、おこらせないで、ほしいの……」

頭を抱え、歩き出す。歩む先はクエストカウンター。以前までなら、他のアークスが声を掛けてくれたりしたが、今は誰1人アイラクの周りに寄り付かない。
アイラクは独り、任務を受注してとぼとぼとキャンプシップへと向かった。

後をつける小さな人影には、気付くことなくーー。