【コラボSS】ニーウとアイラクと銀:負の因果を裁く者

ニーウとアイラク、フレンドさん・チムメンのMA-SAさんのマイキャラ「銀」との交流SSです。

双方の設定を読んでいなければ不明な個所がある・ニーウの裏設定およびパラレル設定が含まれます。また、ニーウに関してパラレル設定が関連する影響でPSO2世界観から逸脱した描写が含まれます。

(プライベッターでは公開範囲を限定してあるものです。くれぐれも上記をご注意の上閲覧の判断を宜しくお願い致します!)


 

 

ーー緊急連絡。アムドゥスキア龍祭壇にて任務中のアイラクさんより、通信が届いています。

 

ーーたすけて、ほしいの、でも、ほかのひとは、よばないであげて、きっとみんなをこまらせたくは、ないとおもうから……おねがい、おねがいなの、っ!!

 

ーー強大なエネルギー反応を確認。アイラクさんとの通信、強制切断されました。至急現地へ向かい、アイラクさんの救援及びエネルギー反応の調査を行なってください。

 

 

 

通信を受け、アムドゥスキア龍祭壇へ降り立ったのは。

 

「……この気配、間違いないな」

 

PasteL*Gearのリーダー、銀だった。

通信で伝えられたエネルギー反応は、ここへ降り立った瞬間直に感じられた。そして、これは以前感じたことがあった。

 

「ニーウの中に居た、『あれ』ーー完全に表に出てきやがったとでもいうのか」

 

ひとつ、舌打ちをする。そして、エネルギー反応の濃厚な1箇所を目指して走り出した。

 

 

 

 

「ーーまだ、まだまだまだ!!アハ、遊ぼうよ!!足りない足りない!!ねえねえ!!おきてよ!!キャハハハハハハ!!」

「っ……」

 

アイラクは、変わり果てたニーウと対峙していた。が、ニーウを傷付けたくない気持ちと、単純な力の差から、一方的な攻撃を受け続けていた。この事態を受けて、龍祭壇を守る龍族たちの協力も得られたものの、彼らもことごとく打ち倒されてしまったのだった。

 

「ごめん、ごめんね……わたしが、あのばしょに、いかなかったら、」

「どうして謝るの?お前のおかげで僕は自由になれたんだよ?ああ、そんなことより早く、ねえ、もっと遊ぼうよお!!」

 

ニーウの表層意識に完全に顕現した『それ』は、身体中に傷を負って倒れるアイラクの髪を掴み、強引に投げ飛ばす。限界まで疲弊した身体では受け身など取れず、なされるがまま地面に叩きつけられた。

 

「つまんない奴だなあ。そんなに弱かったっけ!?もう動かないの!?ねえねえ!!」

「……」

「……はあー、そう。ならもういいや、ばいばいっ!!」

 

アイラクの頭上に、膨大なフォトンを収束させる。それは巨大な雷となり、無慈悲にもアイラクへ降り注がれたーー筈だった。

 

「……ふはっ、あははっ!!来たね来たね!!」

 

雷が落ちたその場所に、アイラクはいなかった。視線をふと横にやると、そこには間一髪で駆け付けアイラクを助け出した銀がいた。

 

「あの馬鹿、飲まれやがって……。おい、大丈夫か?」

「……う、リー、ダー……リーダー……!」

「ああ、分かってる。必ずニーウを取り戻してみせる。お前は安心して休んでな」

 

そう言って、銀は抱きかかえていたアイラクをそっと地面に下ろした。アイラクは安堵と疲労から意識を手放しかけるが、どうしてもこの戦いを、2人の安否を見届けなければ気が済まなかった。閉じそうになる瞼を開け、対峙する2人を捉えた。

 

 

 

「来てくれたんだね!!遊ぶ約束、覚えてる??ふふ、あはは!!」

「俺は約束を飲んだ覚えは無えよ。だが、結果的にそうなっちまったな」

 

銀はダブルセイバーを抜き放つ。

対する『それ』は、顔をこれ以上ないほど歪ませて狂喜した。

 

「遊べればなんでもいいよ!!早く!!ふ、ふふ!殺す殺す殺す!!あそぼぉ!!アハハハハハッ!!」

「元の人格はなさそうだな。悪いが遊ぶつもりはない。ーー本気で、いくぞ」

 

銀は、リミットブレイクを発動。解放されたフォトンが大気を揺るがす。

そのフォトンを浴び、ますます喜びに狂う『それ』ーーニーウ。

 

「アハッ、アハハハハハハハ!!!」

「ニーウを返せッ!!!」

 

ニーウの高笑いと、銀の怒号が交差し、闘争の合図と成した。

 

 

 

先手はニーウ。紫の禍々しい雷撃を纏いながら、銀に向けて彗星の如く宙を駆ける。グランヴェイヴに似た突進だが、速度はおよそ常人では目視もままならない。

銀はダブルセイバーにフォトンを圧縮させ、真っ向から突きを放って迎え撃つ。切っ先はニーウの纏う紫電のフォトンとぶつかり合い、大気をぐらりと揺るがした。そのまま両者は暫し拮抗し、睨み合う。

 

「けけけけけけッ!!!!」

「っ!!チイッ」

 

ニーウが銀の頭上とその周辺に落雷を放った。飛び退いたその場所にも、落雷。銀の着地点を執拗かつ正確に狙い続けるが、銀はそれを超える速さで全てを躱しきった。

その間にニーウは銀の背後に回っていた。凝縮した禍々しいフォトンによる目にも映らない蹴撃が銀を襲う。銀は咄嗟に振り向き、ダブルセイバーでそれらを往なす。2つの強大なフォトンのぶつかり合いは、最早龍祭壇の全体を震わせているのではないかと思える程に激しかった。

ニーウが最後の一撃を放ち、銀はそれを跳び退きながら受け流す。互いに距離を取り、体制を立て直すーー筈だったが、ニーウの攻勢はまるでとどまることを知らない。

 

「アッハア!!!!!楽しいね!!楽しいねえ!!!!」

「まだ来やがるか……上等だ」

 

2人の力は互角。倒れるのは、先に力を使い果たした者だろう。時間との勝負だった。

 

(そんなに悠長にもしてられないな)

 

銀には、ひとつ危惧していることがあった。

 

(今のあいつは負の感情の塊みたいなもんだーー時間をかければかける程、ダーカー因子を引き寄せちまうリスクも高くなる)

 

そう、今のニーウはダーカー因子の影響を受けやすくなっている可能性があるのだ。

早くニーウを乗っ取っている彼を封じなければ、どうなるか分からない。

 

「とっとと終わらせてやる」

 

無数の雷撃を避け、ニーウの眼前に躍り出る銀。ありったけのフォトンを込め、イリュージョンレイヴを叩き込んだ。全ての攻撃をまともに受けたニーウだったが、ただでやられてばかりではない。ニーウもイリュージョンレイヴを浴びながら、落雷と自身の放電を銀に放った。

 

「ッぐ、かは、アハハッ、キャハハハハッ!!!」

「ちっ……!」

 

相討ち。互いに攻撃の手を止めると同時に、動きを止めた。ニーウも銀も、この一瞬で大きく消耗した。

 

「まだ、まだまだ……けほっ……ふふ、もっと、あそぼっ……!!」

「っは、フラフラしながら何言ってやがる」

 

ニーウの方が、銀よりも僅かにダメージが大きかった。傷だらけで覚束ない足取り、しかしそれでもニーウは止まらない。

 

「あははははははは!!!」

 

今度は蹴撃だけでなく、両手の爪による攻撃も交えてくるニーウ。手数で劣ってしまう銀は、なかなか反撃の余地を見つけられなかった。

 

「思ってたより、やるな……、ッ!!」

 

防戦を強いられた末、ニーウの蹴撃によりダブルセイバーが弾かれた。手放しはしなかったが、大きな隙が生まれる。

 

「きゃはっ!!!死ねええええええ!!!」

 

とどめを刺そうと、ニーウは両足にフォトンを溜め、ヴィントジーカーにも似た渾身の回し蹴りを放った。ーーが、銀に当たる筈のそれは空を切る。正確には、ニーウの意思とは関係なくニーウは宙を舞っていた。

 

「っは……!?」

「掛かったなッ!!」

 

銀は、弾かれた勢いのまま身体を、次いでダブルセイバーを急回転させ、ケイオスライザーを発動していたのだ。蹴撃が接触するまさに刹那、ニーウの脚に纏う紫電が頬を掠めながらの発動だった。

 

「おらあああああッ!!」

 

ケイオスライザーによる風の刃に翻弄され身動きを封じられたニーウに、銀のダブルセイバーの切っ先が飛ぶ。ニーウはそのまま大きく打ち上げられ、程なく地へと叩き付けられた。

 

「……っく、ふふ、はは……」

「ったく……しぶといな、こいつ」

 

もう瀕死に近い状態だというのに、ニーウはまだ笑っていた。

 

(さすがにこれ以上は、ニーウの身体がもたなーー)

 

銀がそう思いかけたとき、ニーウの持つフォトンの流れが変わった。ーーより禍々しい、赤黒いフォトンがニーウに向けて流れ込んできている。

 

「!!まずい!」

 

思わずダブルセイバーを構える銀。危惧していた最悪の事態が起こってしまったのだ。

完全に飲まれてしまう前に、とどめを刺すしかないのか。銀が切っ先をニーウに向けたそのとき、何処からか光のフォトンの束が飛んできた。それは赤黒いフォトンを引き裂き、浄化していく。

 

「これは……ラ・グランツ?」

 

これを放ったのは、倒れていた筈のアイラク。身体を無理矢理起こし、光のフォトンで闇を切り払ったのだ。

しかし、すでに幾ばくかの闇のフォトンはニーウに取り込まれてしまっている。食い止めはしたが、いつまで持つかは分からない。

 

「リーダーっ……、いま、なの……!」

「アイラク……」

 

アイラクもとうとう、飲まれる前にニーウを殺してしまう覚悟をしてしまったか……

 

ーーそう、今だよ。

 

(……?その声は!)

 

銀には、確かに聞こえた。

 

「ニーウ!!」

 

僅かに意識を取り戻した、本来のニーウの声。銀は耳を傾ける。

 

ーーこの黒いのは、幸い僕じゃなくて『こいつ』と結びつこうとしてる。だから、『こいつ』と結び付いた瞬間にーー

 

ここで、声は途切れた。しかし、ニーウの言わんとしていることは分かった。

 

救い出せる。

そう確信し、銀はダブルセイバーを構え、その時を待つ。

暫しの静寂の後、ニーウの身体を赤黒いフォトンが包み込もうとした。

 

「!!これで、消し飛べッ!!」

 

銀は、ニーウへもう一度ダブルセイバーの切っ先を放った。残る力の全てを込めてーー

 

 

 

 

 

 

「……」

「……」

「……えっとお、そのぉ……」

「……」

「ご、ごめんなさい!!」

 

ニーウに宿った『あれ』は、結びつこうとしたダーカー因子ごと、銀の一撃によって消し飛ばすことに成功した。アイラクのラ・グランツで闇が切り離されたことで危害を最小限にとどめることができたのだった。同じく、銀のタイミングもちょうど『あれ』と闇が結び付いたその瞬間を捉え、双方共に綺麗に消滅させることができた。

 

その後、通信が回復し、3人はすぐさま帰投、メディカルセンターへとまとめて搬送されたのだった。

そして、それから数日が経ち、メディカルセンターから3人一緒に出てきたのだがーー

 

「ごめん、じゃないだろ」

「いや、その……」

「え、えーっと……、けんかは、だめなの……」

 

出てくるなり、気まずい雰囲気になる3人。

 

「別に責めてる訳じゃない。あれは誰にも責められないからな。……まあ、強いて言うなら『あれ』に簡単に飲まれるニーウの打たれ弱さを責めるべきか?」

「ちょっ!?いや事実ではあるけど!!ひどい!!」

「あー……話が逸れた。お前には謝るより先に言うべきことがあるだろ」

「えっ、えっと……?……!」

 

ニーウははっとして、銀とアイラクに改まって頭を下げた。

 

「た、助けてくれて、ありがとう!それから、心配かけて、ごめん……」

 

言い終わった後も頭を下げ続けるニーウに銀が歩み寄り、手を伸ばす。その気配を感じ、ニーウはびくっと肩を震わせた。

が、その手はニーウの予想とは裏腹に、優しく頭の上に置かれたのだった。

 

「よく戻ってきてくれた」

 

銀が微笑む。

 

「ニーウ、ほんとに、よかったの。どうなるかと、おもったの……!」

 

アイラクがしがみ付く。

 

「!!」

 

ニーウはそれまで封じていた涙を思わず溢れさせた。

 

3人は暫し、互いの無事を祝って笑いあったのだった。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

その日の夜。

銀の部屋に訪ねて来る、小さな人影がひとつ。

 

「リーダー、いるの?」

「ん?ああ、アイラクか。どうした?」

 

銀は扉を開け、アイラクを通した。アイラクは神妙な面持ちで、案内されたソファーに座った。

 

「あの、あのね、ニーウがこないだ、ああなったのは……わたしの、せいなの」

「何だと?」

 

予期せぬ言葉に、銀は少し身を乗り出す。

 

「まえ、にんむのとき、へんな『ゆがみ』をみつけたの。オペレーターのひとは、『パラレルエリア』っていってたの。なんだろうって、ちかよったの。そのとき、ニーウがずっと、ちかよったらだめだって、いってたのに、なんだかよばれてるかんじがして、それで、」

「パラレルエリアに、入っちまったのか」

「うん。ニーウもいっしょなの。そしたらーー」

 

目の前には形容し難い色が渦巻く異空間が広がり、そこには『あれ』が、いたという。

 

「『あれ』を、つれてかえってきちゃったに、ちがいないの。わたしが、パラレルエリアにはいらなかったら、ニーウのいうこときいてたら、あんなことには、ならなかったの……。ニーウもだけど、リーダーにも、いっぱいめいわくかけて、ごめんなさい」

 

深く頭を下げて謝るアイラク。しかし、銀は責めなかった。

 

「気にするな。仲間を助けるのは当然のことだ。それにまさかそんなもんがパラレルエリアに潜んでるなんて思わないだろう。アイラクは俺が来るまで持ちこたえてくれたし、最後は奴からダーカー因子を切り離してくれた……頑張ったじゃないか」

 

優しく微笑み、アイラクの頭を撫でる。アイラクは顔を上げ、銀につられて笑顔になった。

 

「ありがとう、ありがとう、なの」

 

 

 

 

その後銀はアイラクを見送り、ソファにかけ、一息つく。

 

「しかし、まだまだ安心はできないな」

 

銀は、ニーウの中に未だに『あれ』の断片の気配を感じていたのだ。消し飛ばしたのはあくまで、パラレルエリアから連れてきた存在。ニーウの中に元々宿る存在は、消しきれなかったのである。

 

(見込みはある。一度封じ込めることが出来たのなら、あとは強くなるだけだ)

 

後押しくらいはまたしてやろう。そう思い、銀は床に就く支度を始めたのだった。