【コラボSS】アイラクとレミー:壊世アムドゥスキアにて ボクス・ドゥバルス戦

アイラクと、フレンドさんの白助さんのマイキャラ「赫翼(レミー/梅レミさん)」との、壊世アムドゥスキアを舞台にした交流SSです。


 

 

テレポーターの先には、広いフィールドに大型の龍族が一匹。テレポーター越しからとは比べものにならない、気迫。

 

〔天上天下!!アタイが相手だッ!!〕

 

巨大な拳のような腕と、異様に肥大化した翼とも呼べない翼を振り上げ、闘気をあらわに叫びを上げた。

 

「……変わった龍だな。男か女か分からない」

「わたしも、よくわからないの……」

 

個性が濃すぎるこの龍に、レミーとアイラクは困惑の色を浮かべる。

 

〔何をぺちゃくちゃとッ!!〕

「!!」

 

痺れを切らし、かの龍ーーボクス・ドゥルバスは拳を振りかぶりながら猛突進してきた。その速度は、まるで弾丸。見た目に似つかわしくない速さに、2人はまたも驚かされる。

 

「うわっ……」

「っち、速いな……」

 

間一髪で回避する。突き出された拳から放たれる圧倒的な風圧は、当たればひとたまりもないであろうことを物語っていた。

真っ向からの接近戦は危険。言わずとも互いにそれを理解し、アイラクとレミーは即座にそれぞれのあるべき立ち位置を割り出した。

アイラクは、ジェットブーツの高い滞空性能とフットワークを生かして空中から。レミーは遠方からテクニックで攻める。

 

〔ちょこまか鬱陶しいんだよぉ!!〕

 

頭上をグランヴェイヴで飛び回るアイラクへ向け、ボクス・ドゥルバスは拳を振り上げた。アイラクはすぐさま派生技で飛びのき、再びグランヴェイヴで間合いを詰めて連続蹴りを見舞う。

 

「これで、どうなのっ!」

 

その後ヴィントジーカーに繋げ、ボクスドゥルバスの拳に渾身の蹴撃を叩き込んだ。

しかしーー

 

〔その程度か、ああ!?〕

「!?そんなっ……、っ!!」

 

硬い拳は砕ける事はなく、アイラクは拳による一撃で吹き飛ばされるーー前に、レミーが放ったフォメルギオンがボクス・ドゥルバスの身体に命中し、拳の軌道が僅かに逸れた。その隙に、アイラクはボクス・ドゥルバスから距離を取った。

 

「油断するな!!」

「ごっごめん……!」

 

今日何度目かの叱咤を受けながら、アイラクは再び空中へと舞った。

 

〔今のは痛かったぜッ!!!〕

 

フォメルギオンは効いていたようだが、ボクス・ドゥルバスは楽しげだった。お返しにと言わんばかりに、今度はレミーに向けて突進してくる。レミーはそれを飛び越えて回避し、その隙に溜めたゾンデ零式を叩き込んだ。その瞬間、僅かにボクス・ドゥルバスの動きが鈍ったように見えた。

 

「……なるほどね。背中のアレが弱点か。おい!!」

「なっなあに!?」

 

レミーは、動きが止まった隙にグランヴェイヴを入れようとしていたアイラクに手短に告げた。

 

「背中に生えてる角を狙え!」

「わ、わかったの!!」

 

言われてすぐに、アイラクは背中の角に狙いを定めてグランヴェイヴで突っ込んだ。角に何度も蹴りを叩き込みながら、頭上からの弾けるフォトンの気配を感じて派生技で飛び退く。続いてその頭上にあったフォトンーーレミーの放ったタリスから、再びゾンデ零式が放たれた。

 

〔ぐあっ!?〕

 

アイラクとレミーの攻撃により、角が砕かれ、ボクス・ドゥルバスは口を開きながら膝をついた。

 

「!いまなの!」

「言われなくたって!」

 

口の中に現れた更なる弱点に、アイラクはめいいっぱいのフォトンを解放したヴィントジーカーを放つ。直後に放たれたレミーのフォメルギオンが、ボクス・ドゥルバスに甚大なダメージを与えた。

互いの動きを理解していなければできない、近接攻撃とテクニックの連携だった。

しかしーー

 

「や、やった……?」

「いや。まだだね」

 

これほどの攻撃を受けてなお、ボクス・ドゥルバスは立ち上がったのだ。

 

〔いい度胸してんじゃねえか!〕

 

その叫びと共に、これまで以上に激しい闘気を爆発させた。

 

「う、うそ!!」

「嘘じゃないに決まってるだろ。節穴か?」

「そんなことないもん!」

「はいはい」

 

言い合いながらも、2人は体制を立て直した。

先程とやることは変わらない。そう思い、アイラクはグランヴェイヴによるヒットアンドアウェイを、レミーは遠方からテクニックによる攻撃を行った。

だがーー

 

〔離れてりゃいいと思ってんのかぁ!?〕

「何?」

 

ボクス・ドゥルバスはレミーの方を向いて口を開いたかと思うと、何の予備動作もなく巨大な光線を放った。完全に不意を突かれ、レミーは回避が間に合わず光線の直撃を受けた。

 

「ぐっ……!!」

 

そのまま壁に叩き付けられ、地面に倒れ伏しす。ボクス・ドゥルバスはとどめを刺さんとレミーに迫っていた。レミーには非常に高い自己再生能力が備わっているが、ボクス・ドゥルバスの追撃までにはとても動けるように見えなかった。

 

「う、うめ!?うめ!!」

 

名前を呼ぶその間にも、レミーとの距離は詰められていく。アイラクはジェットブーツにはちきれんばかりのフォトンを溜め、解放し、ボクス・ドゥルバスに彗星の如く突っ込んでいった。

 

「うめを、いじめるなーっ!!」

 

その凄まじい速度のままに、ボクス・ドゥルバスの身体に回し蹴りを放った。ヴィントジーカーに比類するその一撃で、レミーへの追撃に意識を向けていたボクス・ドゥルバスは大きくよろめき、倒れた。

 

「うめ!!うめええええ!!」

「うるさい!!ほっといたら治る!!というかもう動けるから静かにしてろ!」

「ふえっ……はい、なの!!」

 

アイラクは半分泣き顔になりながらレミーに駆け寄るが、レミーはこの間に既に動けるまで回復していた。

しかしそれでもアイラクの怒りは収まらないのか、アイラクもボクス・ドゥルバスに負けじと殺気をあらわにし、キッと睨み付けた。

 

「……ぜったいに、やっつけるの!」

〔……ってえなァ……礼はしっかりしねえとなあ!?〕

 

ボクス・ドゥルバスも、2度に渡りダウンさせられたことに苛立ちを感じたのか、ますます闘争の火がついた。

アイラクはレミーを巻き込まないよう、離れた位置までボクス・ドゥルバスを引き付ける。アイラクへの闘志を燃やすボクス・ドゥルバスは、いとも簡単にアイラクに追従していった。

 

「あの龍、ボクのこともう忘れてる」

 

「礼」をしたいのはこっちだ。そう思いながら、レミーはタリスを構えた。

 

「まあ、このまま忘れててくれる方がやりやすいけどね」

 

アイラクとボクス・ドゥルバスが蹴撃と拳のぶつかり合いを繰り広げる頭上にタリスを投げ、フォトンを溜める。アイラクは半ば暴走していたが、レミーのフォトンを感じ取り、これから放たれるであろうゾンデ零式の範囲外ギリギリへ離脱した。遠くまで離脱しないのは、ボクス・ドゥルバスに確実にゾンデ零式を当てさせるためだった。

予見通り、ゾンデ零式は全弾ボクス・ドゥルバスに降り注いだ。しかし、動きは止めず、アイラクへの猛撃を続けていた。アイラクはレミーのことを気にかける程度の理性を保っているのに対し、ボクス・ドゥルバスは最早我を失っているーーこれが、勝敗の決め手だった。

ボクス・ドゥルバスは、レミーのテクニックによる傷と疲労を気付かぬうちに蓄積していく。そして、アイラクの何度目かの蹴撃により、わずかによろめいた。

 

「くらええええ!!」

 

その隙を逃さず、いつの間にか生え変わっていた角を、ヴィントジーカーで再びへし折った。

 

〔ぐああああっ!!〕

 

激痛と、それにより呼び起こされたこれまでの疲労により、力無く地面に倒れこむボクス・ドゥルバスーーこの時点で勝負は決していたが、アイラクとレミーはありったけの「礼」を込め、更なる一撃を叩き込んだ。

ヴィントジーカー、そしてフォメルギオンーー今度こそ、とどめだった。

 

〔アタイが……負ける……?〕

 

掠れた声で末期の言葉を発しながら、ボクス・ドゥルバスは生命維持を手放した。

2人は動かなくなった龍を暫し眺めながら、嵐の去った後のような静けさが支配するフィールドの余韻の中にいた。

 

「ったく、なかなか手のかかる相手だったね」

「……」

「……?」

「……うめええええええええ」

「!!?あー!!やめろ!!寄るな!!離れろ!!」

 

先程までの気迫はどこへやら、緊張の糸が切れたのかレミーが無事で安心したのか、アイラクは泣きじゃくりながらレミーにしがみ付いた。レミーはアイラクを無理矢理引き剥がすと、煩わしさを振り払うかのように背を向けて、出現したテレポーターへと走った。

 

「ふえ、うめえええまってええええ」

「お前がトロトロしてるからだろ!!ほら行くぞ!」

 

涙を手でめちゃくちゃに拭いながら、アイラクもテレポーターへ続いた。

 

 

 

「ぐすっ……」

「……はあ」

 

ようやく落ち着いてきたアイラクの様子を見ながら、次のエリアへのテレポーターを眺めていた。

 

「このぐちゃぐちゃした気配……ダーカーだな」

 

ダーカーの味も嫌いではないが、倒すとなると嫌いな光のフォトンを使わねばならないことに、少し憂鬱になった。

 

「……」

 

アイラクの表情には、疲労が見て取れた。ぼーっと立ち尽くす彼女に、レミーは声をかける。

 

「……帰る?」

「!!まっ、まだまだ!なの!」

 

ハッとしながら答えるアイラクに、レミーは溜息をつきながら、レスタをかけた。

 

「無理して死ぬくらいなら、ボクが殺すからね」

 

そう言い放って、テレポーターへと歩き出した。

レミーのレスタで少し身体が軽くなったアイラクは、喜びの色とともに明るい声色で返事をする。

 

「うん、わかったの。だいじょうぶ、なの!」

 

2人は、ダーカーの群れが待ち構える次のエリアへと向かった。