アイラクと、フレンドさんの白助さんのマイキャラ「赫翼(レミー/梅レミさん)」との、壊世アムドゥスキアを舞台にした交流SSです。
オペレータの指揮をもとに、エリアを進んでいく。どうやら、特殊な結晶によって生成された障壁のせいで先に進めないらしい。仕方がないので、他のエリアのエネミーを片付けることにした。
エネミーのいるエリアに辿り着くと、そこには
肥大化した青い結晶を身に纏う龍族たちがいた。彼らはアイラクとレミーを見るなり狂ったように襲いかかってきた。
剣を振りかぶる二足の龍族に、小さな翼龍。サディニアン種とディガーラ種の世壊種だ。いずれも、大きな結晶に侵食されているにも関わらず原種とは比べ物にならない程素早かった。陸空からの波状攻撃に、アイラクは思うように動けない。
「わっ、わっ……!」
「お前はそっちの剣士共を引き付けといて。ボクはあいつらを食べる」
「!わかったの!」
レミーはそう言うと、翼腕をばりばりと開き、小さな翼龍ーーヴァルガーラたちを次々とその「口」で掴み、飲み込んでいった。アイラクが剣士ーージ・シュバリザンたちを引き付ける間でもなく、ヴァルガーラたちは一掃された。
「や、やっぱりうめは、すごいの……」
「当然。それより後ろ。呆けてないでよく見ろ」
「!!」
僅かな隙にアイラクの背後に回り込んできたジ・シュバリザンたちが、一斉にアイラクを切り刻まんと迫る。アイラクは寸での所で回避し、一度距離を取った後、グランヴェイヴでジ・シュバリザンの群れへ突っ込んだ。アイラクを狙ってひとまとまりになっていた彼らは、ことごとくグランヴェイヴの連続蹴りを叩き込まれ、吹っ飛んでいった。
「ふう……あぶなかったの」
「ったく……いつまでポンコツなんだお前は。ボクの玩具なんだからもっと相応しくなってくれないと困る」
「ご、ごめんなさい……」
レミーは、ふん、と溜息をついて背を向け、先行する。アイラクは少し遅れて、レミーの後ろをついていった。
龍族の第一波を突破した先には、起伏に富んだ地形にまたも小型から中型の龍族の群れがうごめいていた。
「ディランダール種に、サディニアン種。あとペンドラン種か。まずは一番美味そうなデカブツから……、っ!!」
レミーが一通り敵を観察し、一歩前に出る。しかし、頭上からの気配を察知し咄嗟にその場から飛び退いた。その直後、レミーがいた場所に大量の毒矢が降り注いだ。
「……」
「だ、だいじょうぶ……?」
「殺す」
レミーにとって「食事」を邪魔されるのは、もっとも気分を害することだった。先程の毒矢を放った主ーーゾ・シュバリザンへ向けて、怒りのままに生み出した炎と闇のフォトンーーフォメルギオンを叩き込もうとする。しかし、周囲の龍族たちの攻撃によりそれも阻まれてしまった。
「鬱陶しいな……」
「あ、あー……えっと、あっちのどくやのりゅうぞくは、わたしが、たおすから……うめは、ごはん、たべるの」
「……分かったよ。しくじるなよ」
「わかってるの!だいじょうぶ!」
このまま怒りが最高潮に達してしまうと、どうなるか分からない。アイラクはそう思い、レミーをなだめた。そして約束通り、ゾ・シュバリザンの群れへ駆けていくーーが、その手前にも控えていた龍族たちと、ゾ・シュバリザンが放つ毒矢の雨に早くも足止めされた。
「もう……!!どっかいってよ!」
ジ・シュバリザンたちとペンドラン種ーーグルドランたちを蹴散らさんと、モーメントゲイルで広範囲への攻撃を見舞う。一撃一撃は甘く、仕留めるとまではいかなかったが、すぐさま派生攻撃で龍族たちを一つ所に引き寄せた。
「これでも、くらえっ……、あわあ!?」
収束した敵の群れに、ヴィントジーカーを叩き込もうとした瞬間、またも毒矢の雨が降り注いだ。フォトンを溜めている最中だったため僅かに反応が遅れ、数本がアイラクの身体に命中した。
「っ……!」
痛みと毒によってふらつき、龍族たちに大きな隙を晒す。引き寄せられた龍族たちは拘束が解けるや否や、一挙にアイラクへと向かった。
「や……っ」
アイラクは思わず目を閉じた。が、覚悟していた龍族たちによる追撃はない。代わりに、アイラクの目前を赤黒い熱線が横切った。直撃せずとも皮膚を焼き焦がすかのような熱。それをまともに食らった射線上の龍族たちは一匹残らず灰と化した。
「う、うめ……」
その熱線ーーフォメルギオンを放ったのは、レミーだった。
なんとか踏みとどまって振り向くと、再びアイラクの目の前に何かが飛んでくる。慌てて飛び退ろうとするが、レミーが遠くから「動くな!」と制してきたので、留まる。程なくして、アイラクの身体を光のフォトンが包み込んだ。それは、飛んできたレミーのタリスから放たれたものだった。
「!レスタと、アンティ……!うめ、ありが」
「喋ってないで周りをよく見ろ馬鹿!!」
「は、はいなの!!」
レミーが叫んだ直後、またもや毒矢がアイラク目掛けて降り注ぐ。今度は全てを躱しきり、次の矢の装填の隙にグランヴェイヴで一気に距離を詰めた。その後すぐにモーメントゲイルでゾ・シュバリザンたちを引き寄せる。身体の自由を奪われた射手たちは、続いて繰り出されたヴィントジーカーによって薙ぎ払われた。
レミーもその間に全ての龍族を撃破していたようで、戦闘を終えたアイラクに歩み寄った。
「う、うめ」
「しくじるなって言ったよなあ?」
「ごめんなさい……」
2度に渡りレミーから叱咤を受け、アイラクは今にも泣きそうな顔で俯いた。
「……」
「……」
しばらく互いに言葉を発することなく立ち尽くしていたが、だんだんバツが悪くなってきたのか、レミーから口を開いた。
「……あの射手の狙いがお前に集中してたのは、助かったけどさ……」
「えっ……」
レミーの言葉に、アイラクはぱっと顔を上げた。レミーはその途端に目線を逸らし、後ろを向いてしまった。
「ただし!!呆けていいとは言ってないからな!次足手纏いになったら殺す!いいな!」
「わ、わかったの!あの、さっき、ありがとう、なの!」
「うるさいっ」
レミーは足早に、出現したテレポーターへと向かう。アイラクは相変わらず、一歩遅れてレミーの後を追っていった。
元のエリアに戻ると、障壁を生成している結晶のひとつが割れていた。
「その辺のエリアの敵を倒すと壊れるみたいだね」
「あと、4つ、なの……」
「……帰る?」
「!ま、まだ!うめがいいなら、もうちょっと……」
「ん。じゃあ行こうか」
アイラクは1戦目から少し滅入っているようだった。それでも身体はまだまだ動く。レミーも楽しみにしていたこの地を、最奥まで踏み入れずに帰るのは忍びなかった。
そんなことを思いながら、アイラクはレミーの後から次のエリアへのテレポーターへと向かった。
降り立ったのは、平地に所々岩が隆起している、先程よりも広いフィールドだった。その岩の上には、先刻苦戦を強いられた射手ーーゾ・シュバリザンが矢をつがえて待ち構えていた。下には、小型の龍族たち。
「また鬱陶しい射手か……」
「さっきのとこより、かずが、おおいの……」
先程のことから、アイラクとレミーはかの射手を優先的に狙うことにした。しかし、岩と岩の間が離れているため、とてもではないがモーメントゲイルで引き寄せて戦う手段は取れなかった。
「どうしよう……」
考えているうちに、地面にいる龍族たちが2人に襲い掛かってくる。2人は互いに距離を離すかたちで飛び退いた。龍族たちは、ふた手に分かれてアイラクとレミーそれぞれに迫った。それに加え、ひっきりなしに毒矢が降り注ぐ。これらに阻まれ、またしても射手たちへの攻撃手段を失ってしまった。
「またこの流れか……」
レミーはとりあえず回避を続けつつ、射手たちの様子を伺う。
(あの岩が奪えれば)
テクニックを主体に戦うレミーにとって、遠方や高所は非常に有利な場所。なんとかして、射手を一匹だけでもあの岩から引きずり下ろしたかった。
レミーは龍族たちを引き付けながら毒矢を回避し、移動していく。狙ったのは、アイラクに意識を向けている射手の背後だった。レミーは射手に接近すると跳躍し、射手の頭上につく。射手が驚いて見上げた時には、レミーが放ったゾンデによって意識を断たれていた。
「よっ、と。……さて」
岩の上に降り立ち、登って来ようとする龍族たちを見下ろしながら、手を振りかざす。すると、レミーの周囲に何本もの激しい落雷ーーゾンデ零式が発生し、追いすがる龍族たちをまとめて叩き落とした。
「ふふ、無様。ああ、綺麗に焼けてる奴はあとでおやつにでもしようかな」
敵を一掃できて気分が良くなったレミーは、その勢いに任せて残りの射手を片付けにかかった。
先にアイラクの方を向いている射手をゾンデで倒していき、足場を確保していく。自分を狙う射手たちが毒矢を放ったら、空いた足場に着地して、矢をつがえる隙にゾンデを落とす。まるで舞でも舞っているかのような軽やかさで飛び回りながら、射手たちを全て無力化していった。
「ふう。楽しかった。で、あいつは……」
アイラクの方を見ると、まだ龍族たちと戦っているようだった。射手がいなくなり思うように動けるようになったのか、どうやらアイラクが優勢らしい。
「あの様子なら大丈夫そうだけど」
レミーは、一応、と、岩の上からいつでもレスタをかけられるように準備をしていた。
その後アイラクも全ての龍族を倒し、元のエリアへのテレポーターが転送された。戻ると、2つめの結晶が消滅していた。
「さ、次だね」
「うん……。なんだか、つぎは、いままでとちがうきがするの」
「怖気付いた?」
「そ、そんなことないもん!」
「ふふ。じゃあ、行こう?」
「うんっ!」
テレポーター越しでも分かる、弾けるような闘気。ーー強敵が、この先に居る。
2人は3つ目のテレポーターへと消えていった。
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