アイラクと、フレンドさんの白助さんのマイキャラ「赫翼(レミー/梅レミさん)」との、壊世アムドゥスキアを舞台にした交流SSです。
「がおーっ!」
威勢のいい少女の声。アイラクはレミーの部屋に入るなり、挨拶代わりの掛け声を上げた。
「……」
当のレミーからは、返事がない。部屋の奥にあるベッドの上で、アイラクからは背を向け窓の外を眺めている……のではなく。
「……zzz」
「!!うめえええ」
眠っていた。しかし、浅かったのか、アイラクが名前を呼ぶとすぐに目を覚ました。レミーは振り向きもせず、
「寝ようと思ってたんだけど。起こすほどの用事?」
と若干不機嫌な声色で問うた。アイラクははっとして、申し訳なさそうに項垂れた。
「あっ、あえたのがうれしくて、つい……。ねるのなら、おいとま、するの」
暫しの沈黙の中、レミーが僅かにアイラクの方へ顔を向ける。
「……別にいいけど」
「!えへへ……!」
受け入れの意を示され、アイラクは嬉しさのままぴょんぴょんと跳ねた。その後、いつの間にかアイラクの方を向いて座る姿勢になっていたレミーと向かい合って座った。その後再び沈黙が流れたが、アイラクの表情は楽しげだった。
が、しばらくすると。
「布団に上がっていいって言った覚えはないぞ?」
レミーが表情を変えずに告げる。アイラクは慌ててベッドから降りた。
「ご、ごめんなさい……」
真剣に謝り、俯く。しかし、その後アイラクの耳に聞こえてきたのは溜め息ではなく。
「くすくす」
「……!!」
微かに聞こえた笑い声に、アイラクはからかわれていたのだと理解した。すぐさま顔を上げ、「も、もう!」と抗議するが、レミーは相変わらず悪戯っぽい笑みを浮かべるのみだった。
「……どっか行くの?」
レミーがアイラクに尋ねた。アイラクは本当にレミーに会いにきただけなのか、えっ、という表情でレミーを見た。少し、んー、と考えてから、あっと声をあげてレミーに答えを返した。
「かいせいアムドゥスキア、まえに、いきたいっていってた、よね?いきたいの!ニーウからも、うめがつれてってくれるって、きいたの!」
「……そ。じゃあ、行こうか。壊世アムドゥスキア」
「うんっ!」
喜ぶアイラクをよそに、レミーは余計なことを吹き込んだニーウをどう料理してやろうか、と考えを巡らせながら、マイルームの扉を抜けていった。
「……」
ロビーへ到着し、早速壊世アムドゥスキア調査の任務を受けたはいいものの。
「人が、集まらないな」
「んー……」
時間帯が悪いのか、2人以外に誰も任務への参加者がいなかった。
「だ、だいじょうぶかな……」
「大丈夫じゃないかな。まあ観光だし……」
「そ、そか……」
今回は、気軽にいこう。そんな空気を感じ取ったアイラクは、少し心配しながらも肩の力を抜くように努めた。
しかし、気軽などという気構えなどこの地では一切通用しないということを、今の2人は知る由もなかった。
キャンプシップのテレプールを抜け、2人は壊世アムドゥスキアへと降り立った。
青く輝き、角度によって多様な色を放つ不思議な結晶で埋め尽くされた洞窟だった。綺麗な色をした花や、透明度の高い水が溜まった池なども点在し、これまでのアムドゥスキアのどの地とも違う様相を呈している。
「……すごいね」
「ね!ぴかぴかなの!」
「これが火山な訳ない……」
珍しく、レミーも驚きを隠せないようだった。
テレポーターが設置してあるこのエリアは安全なので、2人はしばらくこの異様な風景を見て回った。レミーは池に足を踏み入れ、身体が濡れることも構わずに身の大半を沈めた。アイラクもそれに続いて水に浸かってみる。
「……水も変な味」
「え!?」
レミーは口に含んだ水を不味そうに吐き捨てた。
「へんなみずじゃ、ないよね?」
アイラクは慌てて池から上がって、水を払う。
「多分?」
レミーも味以外のことは分からないようで、曖昧な答えを返した。アイラクは不安を隠せず、水を払い続けた。このときにもレミーは微かに笑っていたが、必死なアイラクはまったく気付いていなかった。
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